法律家のための交渉力入門(パネルディスカッション)


野村 美明・茅野 みつる・柏木 昇・豊田 愛祥

日本弁護士連合会夏期研修会

2003年7月29日(火)午後1時〜3時 弁護士会館2階クレオ

 日本国内でも対外的にも、紛争解決や合意形成のための手段として、交渉の役割はますます増大している。報告者らは、法律家や公務員などプロフェッショナルの交渉力を高めるために、法務研究財団の研究助成を受けて、2001年より「実践的交渉教育普及のための戦略研究」を行っている。パネルディスカッションを通じて、この研究の一端を紹介した。

 野村は、日本の弁護士は交渉が下手かと問う。日本では原理原則を正面に出すと嫌われたが、参加型社会に向けてむしろ法律学的交渉手法の価値は高まっている。しかし、この手法を弁護士自身が活用しているとは言い難い。では、日本の弁護士の交渉力をレベルアップするための方策はなにか。

 茅野は、日本企業が米国または英国の企業を交渉相手とした場合には、論理(ロジック)に基づき説得力をもって交渉展開をすることにより交渉をより有利に展開することができるという。論理的思考能力および説得力を身に付けるためには、これらを教育の一環として学ぶことが不可欠である。

 柏木は、交渉が合理の上にのみ成立することがめったにないので、交渉の一般理論は成立しないという。したがって、交渉の実践に当たっては、合理に基づく理論が感情などの非合理によってどれだけ変容をうけるかを考慮すべきである。常に臨機応変の対応が必要である。

 豊田は、弁護士の交渉方法に向けられたパネリストの批判に反論しながら、弁護士が紛争解決交渉において戦略的な思考方法を学ぶことの重要性を説く。「我の全力をもって彼の脆弱な一部分を撃つ」という発想が重要だという。





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