特定領域研究 「日本法の透明化」プロジェクト
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  詳しくは、「日本法の透明化』プロジェクト総括班のホームページまた特定領域研究説明(PDFファイル)を参照して下さい。
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概要
 
  ■■概要
 
■■概説
 
■公法的な問題
銀行業
証券業
保険業
金融商品取引
 
■私法的な問題
手続法


概 要

森下哲朗
上智大学法学部 教授


 -概観-

日本の金融法秩序は、制定法、裁判例、金融当局のガイドライン等が絡み合って形成されている。
日本における金融取引に関する法律問題は、金融取引に携わる当事者の監督や規制等に関する公法的な問題と、金融取引の当事者間の権利義務等に関する私法的な問題に大別することができる。日本は大陸法系に属し、法秩序の基本にあるのは制定法である。しかし、私法的な問題との関係では、制定法の内容は一般的な規定に止まることが多く、実務上は裁判例が重要な意味を持っている。他方、公法的な問題については裁判例は殆どない。代わりに、実務上は当局が当局内部の事務処理の指針として作成しているマニュアル等が重要な意味を持っている。 

 -公法的な問題-

公法的な問題としては、例えば、金融業に携わる者の要件・業務、金融当局による監督・検査等、金融市場の公正・秩序の維持、消費者等の保護などが挙げられる。日本の金融業は、大きく銀行業、証券業、保険業、その他の金融業に分けることができるが、例えば、銀行業、証券業、保険業については、それぞれ、銀行法、証券取引法、保険業法が、存在し、免許や届出の要件、業者が行いうる業務、監督・検査等についてのルールを定めている。なお、証券業については、平成16年6月に新たに金融商品取引法が成立し、ファンド等証券以外の投資性の金融商品をも包括的に規律する法制に改められることとなった。

日本の金融当局は金融庁であり、全ての金融分野を包括的に所管する。金融庁には監督局と検査局があり、監督局は監督指針、検査局は検査マニュアルを内部の事務処理のための指針として作成・公表している。これらの監督指針、検査マニュアルは制度上、何ら法的な効力を有するものではないが、実務上は業者が遵守すべきルールとして存在している。なお、日本では金融業者が監督当局の判断を司法手続で争うことは殆ど考えられないというのが現状であり、金融監督に関する法的問題については殆ど司法は機能していない。

金融市場の公正・秩序の維持については、金融商品取引法が証券市場の秩序維持に関するルール等を規定するほか、独占禁止法が競争の確保や取引の公正に関するルールを規定している。

 -私法的な問題-

消費者保護のための特別のルールを定める金融商品販売法などの例を除き、金融取引の私法的な問題については、民法、商法、民事訴訟法、破産法、民事再生法といった私人間の権利義務等に関する実体・手続の一般ルールを規定する法律が適用される。これらの法律のルールの多くは金融取引を念頭において作成されたものではないため、個々の金融取引との関係でこうした制定法をどのように解釈するかが問題となる。判例はこのような解釈について、実務上の指針を与えてくれるものである。日本においては裁判例は後の裁判を拘束するものではないが、特に最高裁判所の判断はその後の裁判においても尊重される傾向があり、実務上重要な意義を有する。

 
 

 
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