国際公共政策学科について
学科長メッセージ
  • 学科長:松繁寿和 教授
  • 学科長:松繁寿和 教授

 新しい学科が立ち上がり2年目に入りました。専門科目の授業数が増加し、教員の専門分野に関して細かな指導をうけるセミナーも始まりました。未知の分野に挑むときの多少の戸惑いと大きな希望が入り混じった高揚感が、学生と教員の両方から伝わってきます。国際公共政策という新しい教育が大阪大学法学部で動き始めています。

 国際公共政策学科は世界を舞台に活躍できる人材を育てることをミッションとしており、そのために必要とされる素養の確立や技術の習得を目指した教育が行われます。それは、伝統的な法学部教育にくわえて、外国語能力の向上、経済学関係の科目の導入、そして実証的姿勢の育成という三つの大きな特徴を持っており、グローバル化し複雑化する世界において、一つの専門性を持つだけでは活躍が難しくなってきたということを反映して作られたカリキュラムです。法学と経済学、経済学と政治学、政治学と法学というだけでなく、外国語能力をもった経済学者、法学者、政治学者が求められるようになっています。

 国際舞台で活躍するには外国語能力が必要であることは、言うまでもないでしょう。きょう専門的な知識や技能が求められるような重要な問題が生じれば、きょうの夜、あるいは、あすには飛行機に乗り国際会議に参加し、各方面と交渉を重ね結果をまとめ、あさってには帰国の途につくということができるような人材が必要とされています。

 したがって、新学科では将来現実に使えるレベルまで外国語を習得することを目標としています。単に翻訳能力のみを求めるものではありません。国際社会において、自分の力で交渉をまとめたり複雑な構造を持つ問題を解決したりするには、かなり高いレベルで他の言語を操る必要があります。もちろん、学部の4年間だけでは十分な訓練を行えませんが、卒業後も海外の大学院に留学したり国際関係の仕事に就いたりして、外国語能力を継続して伸ばしていけるだけの準備をしてもらいたいと思っています。

 また、現在、人類が直面する問題は分野横断的な特徴を持っています。貧困を解決するには、制度や法律を整備すること、平和で安定した統治を維持すること等が重要ですが、富を作り出すためには、国内産業の育成や雇用の創出などの経済問題を解かねばなりません。また、現在、世界経済が直面しているサブプライムローンの崩壊に端を発した世界同時不況は経済問題ですが、猛威を振るうマネーを規制するには適切な法律や制度の整備が必要です。

 さらに、現実の政策効果の測定や政策評価を行うには、実証的姿勢とそのために必要な技術の習得が求められます。現実には理論通りに結果が現れないことが多く、政策の是非、あるいは、理論の妥当性を検証するということが求められています。

 新学科の第一、二期生は、国際指向が強く、留学を視野に入れ準備をしている学生や、海外の出来事に強い関心を示す学生が多く、大阪大学の中でも高い活力をもった学科です。彼らがどのように育っていくかを思い描くのは楽しいことですが、同時に彼らの期待を裏切らないためには、教員の責任も大きいと感じています。国際公共政策という新しい歴史の作成に参加したい若者に集まってほしいと思っています。